資金調達 SPECIAL REPORT — Vol.15191

与信管理の3つの死角と未収金を見直す7つの手順【保存版】|医療・介護の未収金対策

与信管理は医療・介護事業者の死角です。国保連・支払基金分は回収しやすい一方、自費診療・利用者負担・委託取引には回収リスクが潜みます。未収金対策と取引信用保険、ファクタリングの償還請求の違いまで中立に整理した保存版です。

編集部 / biz-trend.works
| 2026.06.22 公開 | 更新:2026.06.04 | 読了 6分
与信管理の3つの死角と未収金を見直す7つの手順【保存版】|医療・介護の未収金対策
Photo by BizTrend 編集部 / 2026.06.22

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与信管理は、医療・介護事業者にとって「自分には関係が薄い」と思われがちなテーマです。国保連や社会保険診療報酬支払基金を経由する保険診療分は、回収できる見込みが高いからです。しかし実際の事業者の収益は、それだけで成り立っているわけではありません。自費診療・利用者負担分・委託先取引には、保険外ゆえの回収リスクが確かに存在します。本記事は、医療・介護に特有のこの「保険分は回収しやすいが保険外は読みにくい」という二重構造を踏まえ、未収金と与信のリスクをどう見直すかを、ファクタリングを含む複数の選択肢と合わせて整理します。

医療・介護で見落とされやすい与信管理の死角

クリニックや介護事業所のキャッシュフローは、収入源によって回収の見込みが大きく分かれます。診療報酬や介護給付費のうち、国保連・支払基金が審査して支払う部分は公的な仕組みに支えられ、ほぼ滞りなく回収できます。問題はその外側にあります。

具体的には、保険外の自費診療(健康診断・予防接種・自由診療・文書料など)、利用者が窓口で負担する一部負担金、そして給食・送迎・清掃・人材派遣といった委託先との取引です。これらは民間同士の取引であり、相手が支払えなくなれば、そのまま未収金として手元に残ります。

とくに介護事業では、利用者負担分の滞納や、施設へサービスを提供する協力会社への前払い、逆に元請法人からの委託料の入金遅延など、保険分とは性質の異なる債権が積み上がります。回収しやすい部分に意識が向くあまり、保険外の未収金が静かに膨らんでいることは少なくありません。

与信管理を「保険分」と「保険外」で分けて捉え直す

医療・介護の与信管理で出発点になるのは、自院・自施設の収入を回収のしやすさで仕分けることです。保険分と保険外を一緒くたに「だいたい入ってくる」と捉えていると、本当にリスクのある部分が見えなくなります。下表は、回収の見込みと主なリスクを整理した一例です。

収入の種類 回収の見込み 主なリスク
保険診療・介護給付(国保連/支払基金) 高い(公的審査・支払) 入金まで約2ヶ月のタイムラグ
自費診療・自由診療・文書料 中程度(相手の支払能力次第) 高額自費の分割・未払い
利用者一部負担金 中程度 滞納・連絡不能・長期化
委託先・協力会社との取引 取引先の与信に依存 委託料遅延・前払いの焦げ付き

この仕分けをすると、保険分の入金タイムラグは「資金繰り」の課題、保険外の未収金や委託取引は「与信管理」の課題、と性質が分かれて見えてきます。打ち手も自ずと変わります。前者は早期現金化が効き、後者は相手の信用を見極める工夫が効きます。

提携に依存しない4つの未収金・与信リスク対策

未収金や回収リスクを和らげる手段は、ファクタリングだけではありません。ここでは、当メディアが広告提携していない中立的な選択肢も含めて4つを並べます。自院・自施設の状況に合わせて組み合わせるのが現実的です。

1. 未収金管理の運用を整える。最も費用がかからず効果が出やすいのが、回収の仕組みづくりです。自費・一部負担金の請求書発行と入金消込のルール化、滞納が一定期間を超えた場合の連絡手順、分割払いの可否と条件の明文化などを整えます。属人的だった督促を仕組みに変えるだけで、未収金の長期化を相当に抑えられます。

2. 取引信用保険。委託先や協力会社の倒産・長期延滞で売掛金が回収できなくなったとき、損失の一部を保険でカバーする仕組みです。損害保険会社が提供しており、特定の委託先への取引が大きい介護事業者などが、回収不能リスクをヘッジしたい場合に検討の余地があります。保険料や填補率は契約内容で変わるため、複数社で条件を比較します。

3. 銀行融資・公的制度の活用。保険分の入金タイムラグによる一時的な資金不足には、運転資金の融資や公的な制度資金が選択肢になります。金利は低めで、急場をしのぐ手段として基本になります。ただし審査と実行に時間がかかるため、緊急の資金詰まりには間に合わないこともあります。

4. ファクタリング。確定した売掛債権を期日前に第三者へ譲渡し、早期に資金化する方法です。融資ではなく債権譲渡であるため、借入枠を圧迫せずに資金繰りを回せます。医療・介護では診療報酬債権を対象にした専用のサービスもありますが、利用にあたっては償還請求の有無の違いを理解しておく必要があります。

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ファクタリングの償還請求あり・なしの違い

ファクタリングには、ノンリコース(償還請求権なし)とウィズリコース(償還請求権あり)の2種類があります。この違いは、回収リスクを最終的に誰が負うかを決める分岐点です。

種類 取引先が支払えない場合 医療・介護での意味
ノンリコース(償還請求なし) 原則として利用企業に返還義務なし 委託先の貸し倒れリスクを移転しやすい
ウィズリコース(償還請求あり) 利用企業が買い戻す義務を負う場合がある 資金化はできても回収リスクは残る

診療報酬債権のように回収しやすい債権を早期化するだけなら、手数料の水準が判断の中心になります。一方、委託取引の債権など回収リスクを伴うものを移したいなら、償還請求の有無をあらかじめ確認しておきます。手数料の安さだけで選ぶと、リスクが手元に残る契約になっていることがあります。なお手数料や契約形態は各社で大きく異なり変動するため、最終的な条件は公式情報で確認してください。

ファクタリングは融資でなく債権譲渡です。償還請求の有無や手数料は各社で異なり変動するため、契約前に公式情報で確認してください。また、給与ファクタリングを装うものや法外な手数料を提示する違法業者には十分注意してください。

医療・介護事業者が今日から着手できる順序

最後に、クリニック・介護事業所が現実的に取り組める順序を示します。いきなり全部を整えようとせず、効果の大きいところから手を付けるのが進めやすい形です。

第一に、収入を保険分と保険外に仕分け、保険外の未収金がどれだけ積み上がっているかを数値化します。第二に、自費・一部負担金の請求と督促の運用ルールを整え、滞納の長期化を防ぐ仕組みをつくります。第三に、委託先との取引については、取引信用保険や与信調査で平時のリスクをヘッジします。第四に、保険分の入金タイムラグや急な資金詰まりに備えて、銀行融資とファクタリングの選択肢を、償還請求の有無を含めて把握しておきます。この順序なら、費用の低い対策から回収リスクを着実に和らげていけます。

医療・介護事業者の経営や資金繰りに関する一次情報は、公的機関で確認するのが手堅い方法です。中小企業の資金調達や経営支援の制度は中小企業庁の公式サイトで確認できます。あわせて、関連する手段を整理した資金調達カテゴリの関連記事もご覧ください。

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Q. 国保連や支払基金からの入金は滞りにくいのに、なぜ与信管理が必要なのですか。

A. 保険診療・介護給付分の回収は滞りにくいものの、それは収入の一部にすぎないからです。自費診療・利用者の一部負担金・委託先との取引は民間同士の取引で、相手が支払えなければ未収金として残ります。回収しやすい部分とそうでない部分を分けて捉えることが、与信管理の出発点になります。

Q. 医療・介護でファクタリングを使う場合、何に注意すべきですか。

A. まず融資ではなく債権譲渡である点を理解することです。そのうえで、診療報酬債権のように回収しやすいものを早期化するなら手数料水準が中心の判断になり、委託取引などリスクを伴う債権を移すなら償還請求の有無が重要になります。手数料や契約形態は各社で異なり変動するため、契約前に公式情報で確認してください。

本記事は2026年6月時点の情報に基づいています。

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