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取引先や金融機関とESGの話をするとき、専門用語の壁に戸惑った経験はないでしょうか。「Scope3を出してほしい」「SBT認定はあるか」「TCFDに沿った開示を」――これらの言葉の意味が曖昧なままだと、要請の重さも自社の対応範囲も判断できません。本記事は、中堅企業の経営者・CFOが押さえておきたいESG関連の重要用語を、実務での使われ方とあわせて辞典形式で整理します。網羅ではなく、現場で実際に飛び交う言葉に絞り、自社の意思決定に役立つ理解を目指します。
結論:中堅企業がまず押さえるべきESG用語は、排出量を区分する「Scope1・2・3」、算定の国際基準「GHGプロトコル」、削減目標の枠組み「SBT」、気候リスク開示の枠組み「TCFD」、そして日本の開示基準「SSBJ」の5つです。これらは取引先や金融機関との会話に頻出し、意味を取り違えると対応範囲を誤ります。とくにScope3(サプライチェーン排出)は中堅企業がデータ提供を求められる中心的な概念で、自社が「誰のScope3の一部なのか」を理解することが、要請への適切な応答につながります。
排出量の区分に関する用語
ESGの環境(E)で最も頻出するのが、排出量の区分を示す用語です。下表は中堅企業が押さえたい基礎用語を整理した目安です。定義は国際的な基準に基づきますが、実務での適用範囲は事業者ごとに異なるため、取引先との会話では具体的な対象範囲を確認してください。
| 用語 | 意味(目安) | 中堅企業との関わり |
|---|---|---|
| Scope1 | 自社の燃料燃焼などによる直接排出 | 工場・車両の燃料が対象 |
| Scope2 | 購入した電力・熱の使用に伴う間接排出 | 電力契約の見直しと直結 |
| Scope3 | 調達・物流・出張など事業活動全体の間接排出 | 取引先から提出を求められる中心 |
| GHGプロトコル | 温室効果ガス算定の国際的な基準 | 算定の前提となる枠組み |
| カーボンニュートラル | 排出量と吸収量を差し引きゼロにする状態 | 長期目標として掲げる概念 |
とくにScope3は15のカテゴリに分かれ、調達・物流・出張・廃棄など事業活動全体に広がります。中堅企業が取引先から求められるのは、多くの場合この取引先のScope3を構成する自社の排出量データです。
目標設定と開示に関する用語
排出量を測ったあと、目標を立てて開示する段階で使われる用語も押さえておきましょう。下表に主な用語を整理します。これらは取引先や投資家とのコミュニケーションで頻出します。
| 用語 | 意味(目安) | 位置づけ |
|---|---|---|
| SBT | 科学的根拠に基づく排出削減目標の枠組み | 目標設定の信頼性を示す認定 |
| TCFD | 気候関連の財務影響を開示する枠組み | リスク・機会の開示構成 |
| SSBJ | 日本のサステナビリティ開示基準を定める審議会・基準 | 有価証券報告書開示の軸 |
| RE100 | 事業の使用電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際イニシアチブ | 大企業中心の目標枠組み |
| Jクレジット | 排出削減・吸収量を国が認証する制度 | 削減の取引・調達に活用 |
これらの用語は段階で使い分けられます。GHGプロトコルで「測り」、SBTで「目標を立て」、TCFDやSSBJの枠組みで「開示する」――この流れを理解すると、取引先や投資家がどの段階の対応を求めているのかが読み取れます。
用語理解のコツ:ESG用語は「測る・目標を立てる・開示する」の3段階にひも付けると整理しやすくなります。Scope1・2・3とGHGプロトコルは「測る」、SBTは「目標を立てる」、TCFDとSSBJは「開示する」の段階に対応します。中堅企業が取引先から最初に求められるのは「測る」段階のScope1・2であることが多く、いきなりTCFD水準の開示を求められるケースは多くありません。要請がどの段階のものかを見極めれば、過不足のない対応につながります。
制度・政策に関する用語
2026年の動向を理解するうえで欠かせない制度系の用語もあります。GXは「グリーントランスフォーメーション」の略で、脱炭素を経済成長の機会に転換する政策の総称です。改正GX推進法が2026年4月に施行され、関連してGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働が予定されています。GXリーグは、賛同企業が自主的に排出削減に取り組む枠組みで、サプライチェーン上の中小企業支援も論点になっています。
これらは主に大規模排出企業を直接の対象とする仕組みですが、中堅企業もサプライチェーンを通じて関わります。電力面の理解を深めるには高圧電力のコスト削減方法もあわせて読むと、Scope2削減の具体策と用語が結びつきます。
用語を実務でどう使うか
用語を覚えるだけでは実務は進みません。重要なのは、取引先や金融機関との会話で「相手がどの用語をどの意味で使っているか」を確認することです。同じ「Scope3」でも、相手が求めるカテゴリは取引内容で異なります。曖昧なまま受けると過大な対応になりかねないため、対象範囲・提出形式・期限を具体的に詰めることが、現実的な対応につながります。社内のデータ体制を整える観点ではバックオフィスDXの進め方も参考になります。
知りたい目的別・あなたが先に押さえる用語(モデルケース)
同じ「ESGの用語」でも、何のために調べているかで、先に理解すべき言葉は変わります。自社の目的に近いタイプを起点に、どの用語から手をつけるかを当てはめてみてください。
タイプA:取引先からCO2排出量を聞かれて慌てている(例:大手取引先の調査票が届いた)
おすすめはスコープ1・2・3の区分からです。排出量の照会は、この3区分で問われることがほとんどだからです。自社の直接排出(スコープ1)、購入電力由来(スコープ2)、サプライチェーン全体(スコープ3)の違いを押さえると、調査票の意味を正しく読み取れます。
タイプB:開示や報告書の作成を任された(例:サステナ報告のドラフトを担当することになった)
おすすめはTCFDなどの開示の枠組みからです。報告書はガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標といった枠組みに沿って構成されるためです。枠組みの全体像を先に理解すると、どの情報をどこに書くかの見通しが立ちます。
タイプC:経営方針として脱炭素の方向性を決めたい(例:中期計画に目標を盛り込みたい)
おすすめはカーボンニュートラルや目標設定に関わる用語からです。目標の言葉を正しく使うことが、社内外への説明の出発点になるためです。削減目標の種類や基準年の考え方を押さえると、現実的で説明できる目標を立てやすくなります。
タイプD:制度や規制の動向を把握したい(例:今後の義務化の流れを経営判断に活かしたい)
おすすめは制度・政策に関する用語からです。義務の対象や時期は、制度名と紐づけて理解すると整理しやすいためです。関連する制度の位置づけを押さえると、自社にいつ何が関わるかの見当をつけやすくなります。
複数のタイプに当てはまる場合は、目的ごとに用語の優先順位を使い分けるのが現実的です。いずれの場合も、用語は暗記するためではなく、自社の取り組みを正しく説明し判断するための道具として押さえる姿勢が役立ちます。
まとめ:5つの基礎用語から押さえる
中堅企業がまず押さえるべきESG用語は、Scope1・2・3、GHGプロトコル、SBT、TCFD、SSBJの5つです。これらを「測る・目標を立てる・開示する」の3段階にひも付けて理解すると、取引先や投資家の要請がどの段階のものかを読み取れます。中堅企業が最初に求められるのは「測る」段階のScope1・2であることが多く、要請の段階を見極めれば過不足のない対応ができます。用語は会話の中で相手の意味を確認しながら使うことを心がけてください。
よくある質問
Q. 中堅企業がまず覚えるべきESG用語はどれですか。
A. Scope1・2・3、GHGプロトコル、SBT、TCFD、SSBJの5つが、取引先や金融機関との会話に頻出します。
Q. Scope3とは何を指しますか。
A. 調達・物流・出張など事業活動全体の間接排出を指し、15のカテゴリに分かれます。中堅企業は取引先のScope3を構成するデータの提供を求められることがあります。
Q. 用語を覚えるだけで実務は進みますか。
A. 用語の暗記より、取引先がどの段階(測る・目標・開示)の対応を求めているかを会話で確認することが、過不足のない対応につながります。
次に読む
用語の地図ができたら、算定の手順や開示の進め方もあわせて確認すると効果的です。自社の目的に近いものから読み進めてみてください。
- CO2排出量の算定を始める手順|スコープ別の集計と報告の進め方
- サプライチェーン排出を解説|スコープ3対応で取引先と進める方法
- サステナ報告書の作り方|取引先と投資家に伝わる開示の手順を整理
- 経営者のためのESGの基礎|投資家と取引先が見る論点を整理する
本記事は情報提供を目的とした一般的な用語解説であり、特定の開示判断や法的助言を提供するものではありません。各用語の定義や制度の適用範囲は、基準改定や運用変更によって変動します。個別の対応については、最新の公式情報および専門家にご確認ください。
本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。本記事は biz-trend編集部(株式会社弥)が編集しています。制度・料金・金融関連の数値は変動する可能性があるため、実行判断の前に一次ソースをご確認ください。編集方針・広告開示ポリシーはプライバシーポリシーをご参照ください。



