人事・労務 SPECIAL REPORT — Vol.1539

同一労働同一賃金の実務を解説|手当見直しと説明義務への備え方

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編集部 / biz-trend編集部(株式会社弥)
| 2026.07.01 公開 | 更新:2026.07.27 | 読了 8分
同一労働同一賃金の実務を解説|手当見直しと説明義務への備え方
Photo by BizTrend 編集部 / 2026.07.01

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正社員と契約社員・パートの間で、同じ仕事をしているのに手当が違う――こうした待遇差は、説明を求められたときに合理的な理由を示せなければ法的なリスクになります。同一労働同一賃金は大企業だけの話ではなく、企業規模を問わず適用される原則です。さらに2026年10月にはガイドラインの改正施行が予定され、説明義務の枠組みも明確化されます。本記事では、手当の見直しと説明義務への備えを、中堅企業の人事・経営の視点で解説します。

結論:同一労働同一賃金は、正社員と非正規(パート・有期・派遣)の間の不合理な待遇差を禁じるルールで、従業員が1人でもいれば規模に関係なく適用されます。判断は「職務内容」「配置変更の範囲」「その他の事情」の3要素で行われ、各手当ごとに差の合理性を説明できる資料の整備が前提になります。2026年10月施行予定の改正では、これまで解釈の分かれた賞与・退職金・各種手当の扱いが明確化され、待遇差の説明を求められる旨を従業員へ示す枠組みも整理される見込みです。

同一労働同一賃金とは:3要素で待遇差を判断する仕組み

同一労働同一賃金は、パートタイム・有期雇用労働法などに基づき、同じ企業内の正社員と非正規雇用労働者との間に「不合理な待遇差」を設けることを禁じる考え方です。ポイントは、待遇のすべてを一律に揃えることを求めるのではなく、差を設ける場合にその理由を説明できることを求める点にあります。

合理性は3つの要素で見ます。第一に職務内容(業務の内容と責任の程度)、第二に職務内容・配置の変更範囲(転勤や昇進の有無)、第三にその他の事情(勤続年数や成果など)です。これらが正社員と異なるなら差を設けることに合理性が認められやすく、同じなら同等の待遇が求められます。判断の土台には、近年の最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件、メトロコマース事件、日本郵便事件など)で示された基準があります。

手当ごとに見る待遇差の整理

実務では、賃金そのものより各種手当の方が論点になりやすい傾向があります。手当は支給の趣旨が明確なため、その趣旨が非正規にも当てはまるなら支給しないことが不合理と評価されやすいからです。下表は手当ごとの整理の目安です(個別の事情で判断は変わります)。

手当・待遇支給の趣旨(例)差を設ける合理性の見方(目安)
通勤手当通勤に要する費用の補填雇用形態で通勤費用は変わらず、差は説明しにくい
食事手当・皆勤手当勤務に伴う費用や出勤奨励趣旨が共通なら同等の支給が求められやすい
役職手当役職に伴う責任への対価責任の程度が異なれば差に合理性が出やすい
賞与・退職金功労報奨・長期勤続への配慮職務や貢献の違いを具体的に説明できるかが鍵

2026年10月施行が予定される改正では、ガイドラインに退職手当などが追加されるなど、これまで判断の難しかった項目の整理が進む見込みです。自社の手当体系を改正の方向性に照らして点検し、趣旨と支給対象の整合性を確認しておくことが備えになります。

手当見直しの順番:すべての手当を一度に見直すのは負荷が大きいため、まずは支給趣旨が明確で差を説明しにくい手当(通勤・食事・皆勤など)から着手するのが現実的です。各手当について「なぜこの趣旨なのか」「なぜ正社員のみなのか」を一文で言語化できるかを確認し、言語化できない手当は見直し候補として洗い出します。

説明義務への備え:資料整備が要

非正規雇用の従業員は、自分と正社員との待遇差の内容と理由について、企業に説明を求めることができます。企業は求めに応じて説明する義務があり、これを拒むことは法律違反となります。2026年10月施行予定の改正では、雇入れ時などに交付する明示情報に、待遇差の説明を求めることができる旨を加える方向が示されています。

待遇の棚卸し 3要素で整理 説明資料作成 運用 準備求めに応じ説明
待遇差の説明に備える流れ(一般的な対応の目安)

備えの中心は資料整備です。各待遇について、職務内容・配置変更の範囲・その他の事情の3要素のどこに差があるのかを具体的に示せる資料を、説明を求められる前にそろえておきます。説明の場で初めて理由を考えるのではなく、平時に文書化しておくことで、対応の一貫性と説得力が高まります。人事制度全体の見直しと連動させるなら人的資本経営の開示と中堅企業への影響の論点も押さえておくと整合が取りやすくなります。

中堅企業が取り組む実務ステップ

進め方の目安は、(1)正社員と非正規の待遇項目を一覧化する、(2)各項目を3要素に照らして差の有無と理由を整理する、(3)説明しにくい項目を見直す、(4)説明資料を整備し運用に乗せる、という順序です。見直しには賃金原資が関わるため、人件費全体への影響を試算しながら段階的に進めるのが現実的です。賃金設計や人材確保の観点では経理・財務人材の採用に向くサービスのように専門人材を確保し、制度設計を内製化する選択肢もあります。

制度の趣旨は、非正規という理由だけで不合理に低く扱われることを防ぐ点にあります。是正は単なるコスト増ではなく、待遇への納得感を通じて定着や採用力につながる側面もあるため、人材戦略の一部として位置づけると前向きに取り組みやすくなります。

自社の状況別・同一労働同一賃金への備え方(モデルケース)

同一労働同一賃金への備えは、自社の待遇体系の状況によって最初に手をつける場所が変わります。近い状況を起点に選んでください。

人事・労務

タイプ別 おすすめ早見表

自分に近いタイプから、向いているサービスと理由を確認。詳しくは下のケース別解説で(料金・条件は各社の公式情報で要確認)。

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タイプA:正社員と非正規で手当に差があるが、理由を整理できていない

おすすめは支給趣旨が明確な手当から見直すことです。通勤・食事・皆勤手当などは支給の趣旨が明確で、その趣旨が非正規にも当てはまるなら支給しないことが不合理と評価されやすい手当です。各手当について「なぜこの趣旨か」「なぜ正社員のみか」を一文で言語化し、説明しにくいものから着手すると進めやすくなります。

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タイプB:待遇差の説明を求められたときに示せる資料がない

おすすめは3要素に沿った説明資料を平時に整えることです。職務内容・配置変更の範囲・その他の事情のどこに差があるのかを、待遇ごとに具体的に示せる資料を、求められる前にそろえておきます。説明の場で初めて理由を考えるのではなく、平時に文書化しておくと対応の一貫性と説得力が高まります。

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タイプC:賞与・退職金の扱いに迷っている(2026年10月施行予定の改正が気になる)

おすすめは改正の方向性に照らした手当体系の点検です。改正ではガイドラインに退職手当などが追加されるなど、判断の難しかった項目の整理が進む見込みです。賞与・退職金は職務や貢献の違いを具体的に説明できるかが鍵で、自社の体系を改正の方向性に照らして点検しておくと備えになります。

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タイプD:見直しに伴う人件費の増加が心配で着手できていない

おすすめは人件費への影響を試算しながらの段階的な是正です。見直しは賃金原資が関わるため、人件費全体への影響を試算しながら段階的に進めるのが現実的です。是正は単なるコスト増ではなく、待遇への納得感を通じて定着や採用力につながる側面もあるため、人材戦略の一部として位置づけると取り組みやすくなります。

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共通する要点は、差をなくすことではなく、差がある場合にその理由を3要素で語れる状態をつくることです。複数の状況に当てはまる場合は、待遇項目の棚卸しと説明しにくい手当の洗い出しから着手すると軸がぶれません。

まとめ:差の理由を語れる状態をつくる

同一労働同一賃金への対応の本質は、待遇差をなくすことではなく、差がある場合にその理由を3要素で語れる状態をつくることです。2026年10月施行予定の改正で手当や説明義務の整理が進むことを見据え、まずは自社の待遇項目を棚卸しし、説明しにくい手当の洗い出しから着手するとよいでしょう。判断に迷う項目は、社会保険労務士など専門家の助言を得ながら進めることをおすすめします。

よくある質問

Q. 同一労働同一賃金は中小企業も対象ですか。

A. 従業員が1人でもいれば、企業規模に関係なく適用される原則です。大企業だけの話ではないため、自社の待遇体系を点検しておくことが備えになります。

Q. 待遇差はすべてなくさなければなりませんか。

A. 差そのものを禁じるのではなく、不合理な差を禁じる原則です。職務内容・配置変更の範囲・その他の事情の3要素で、差を設ける理由を説明できる状態をつくることが求められます。

Q. 手当の見直しはどこから着手すべきですか。

A. 支給趣旨が明確で差を説明しにくい手当(通勤・食事・皆勤など)から着手するのが現実的です。各手当について趣旨と支給対象を一文で言語化できるかを確認し、できない手当を見直し候補として洗い出します。

次に読む

同一労働同一賃金への対応は、用語の理解や人事制度全体の見直しと一体で進めると整合が取りやすくなります。近いテーマから読み進めてみてください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の待遇差の適否を判断するものではありません。労働関連法令やガイドラインは改正により変動し、施行時期や内容が変更される場合があります。個別の制度設計や待遇差の合理性判断にあたっては、最新の公式情報を確認のうえ、社会保険労務士・弁護士など専門家にご相談ください。

本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。本記事は biz-trend編集部(株式会社弥)が編集しています。制度・料金・金融関連の数値は変動する可能性があるため、実行判断の前に一次ソースをご確認ください。編集方針・広告開示ポリシーはプライバシーポリシーをご参照ください。

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