月額3万円超のSaaSを5本契約すると、年間180万円が固定費に乗る。中堅企業の情報システム部門にとって、業務アプリの内製化は「外注費を抑える」だけでなく、属人化したExcelマクロからの脱却という経営課題でもある。
2026年に入り、Microsoft Power Apps の Per App プランが1月2日付で新規販売終了(出典:Microsoft Power Apps 公式 pricing、https://www.microsoft.com/en-us/power-platform/products/power-apps/pricing)。ノーコードSaaSの料金体系は、ユーザー課金から編集者課金へと急速に再編されている。
本稿では Bubble・Glide・Adalo・Power Apps の4社を、年商規模・内製レベル別に整理。読み終える3分で、自社で着手すべきノーコードSaaSの判断軸が定まる。
ノーコードSaaSの料金レンジ(2026年5月時点)
出典:各社公式pricing(Bubble / Adalo / Microsoft、2026年5月時点)
スペック・料金・特徴を一目で比較
4社の料金・適合層を整理する。比較の鍵は「編集者課金型(Bubble・Adalo)」か「利用者課金型(Power Apps)」か、そして「ネイティブアプリ生成可否」の2軸である。
| 項目 | Bubble | Adalo | Power Apps |
|---|---|---|---|
| 料金 | $29/月〜(年払) | $36/月〜 | $20/user/月 |
| 上位 | Team $549/月 (編集5名) | Team $250/月 (編集10名) | 2000+で $12/user |
| 課金 | 編集者数 | 編集者数 | 利用者数 |
| 得意 | Web業務 アプリ | ネイティブ モバイル | 社内 業務SaaS連携 |
| 適合 | スタートアップ 受託開発 | 現場向け モバイル業務 | Microsoft 365 導入企業 |
Power Apps は2026年1月2日付で Per App プランの新規販売が終了し、Premium($20/user/月、2000ユーザー以上で$12)への一本化が進んだ(出典:Microsoft公式、https://www.microsoft.com/en-us/power-platform/products/power-apps/pricing)。利用者100名規模なら年間240万円の固定費となり、編集者課金型のBubble Team($549/月=年約78万円)とは桁が異なる。
[chat face=”run” name=”経営者”]
社員50名規模で内製アプリを動かしたいが、Power Apps だと年間100万円超になる…ノーコードに踏み切る判断軸は?
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Bubble・Adaloを選ぶべき経営者像
編集者課金型のBubble・Adaloは、「少数の内製担当者が、全社員が使うアプリを作る」モデルに向く。Bubble Starterは$29/月(年払、出典:https://bubble.io/pricing)で1人開発に最適。Team $549/月で編集者5名まで拡張でき、受託開発を兼ねるスタートアップにも合う。
Adalo は Starter $36/月、Team $250/月で編集者10名まで(出典:https://www.adalo.com/pricing、2026年5月時点)。ネイティブモバイルアプリの App Store / Google Play 配信ができるため、現場スタッフが日常的にスマホで使う在庫管理・点検報告系の業務に強い。
[point title=”編集者課金型の経営判断軸”]
利用者数 ÷ 編集者数 が10倍を超えるなら編集者課金型が有利。
逆に編集者=利用者に近い少人数業務はPower Apps型も検討余地あり。
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Bubble・Adalo の賛否対比
強み
- 編集者課金で利用者数に依存しない
- Web/モバイル両対応の柔軟さ
- 外部APIとの接続自由度が高い
弱み
- UI が英語中心で日本語ドキュメント少
- セキュリティ要件は自己責任
- Microsoft 365との統合は限定的
出典:各社公式情報を基に編集部整理(2026年5月時点)
Glide・Power Appsを選ぶべき経営者像
Glide は Google Sheets / Excel を裏側DBとして使えるノーコードSaaSで、すでに表計算で業務を回している企業の「Excel卒業」の足掛かりに向く。情報システム専任が置けない年商10億円未満の企業で、現場リーダーが自力で立ち上げられるレベルの低学習コストが特徴である。
Power Apps は Microsoft 365 をすでに全社導入している中堅企業向けの本命だ。Premium プランは $20/user/月、2000ユーザー以上の大規模契約で $12/user/月まで下がる(出典:Microsoft公式、https://www.microsoft.com/en-us/power-platform/products/power-apps/pricing、2026年5月時点)。Teams・SharePoint・Dynamics 365 との統合が前提なら、別ベンダーを選ぶよりTCOで有利になりやすい。
Glide・Power Apps の賛否対比
強み
- 既存スプレッドシート資産を活かせる(Glide)
- Microsoft 365 統合が強固(Power Apps)
- 大規模利用ほど単価が下がる(Power Apps $12/user)
弱み
- 利用者数に比例して固定費が増える
- Excelロジック前提だと複雑業務で限界
- Per App プラン終了で小規模利用が割高化
出典:各社公式情報を基に編集部整理(2026年5月時点)
公開レビュー・利用実態の分析
編集者課金型と利用者課金型のいずれを選ぶかは、利用者数で結論が出やすい。Bubble Team は編集者5名で $549/月、年換算で約78万円(出典:Bubble公式、https://bubble.io/pricing、2026年5月時点)。社員200名にアプリを配布しても料金は変わらない。一方 Power Apps Premium は200名規模で月$4,000(年約576万円、出典:Microsoft公式)。Microsoft 365との統合価値を上乗せしてもなお、規模が大きいほど編集者課金型が有利になる。
Adalo は Team $250/月で編集者10名まで(出典:Adalo公式、https://www.adalo.com/pricing、2026年5月時点)、ネイティブアプリ配信ができる点が強み。現場スタッフが日常的に持ち歩く点検・報告・在庫アプリで、Web フォームでは離脱が大きい業務に適合する想定だ。
経営者として注意したいのは、ノーコード導入の真のコストは「ライセンス費」ではなく「内製担当者の人件費+運用設計」である点。月数千円〜数万円の差より、誰が運用・保守を担うかの体制設計が、3年TCOを左右する。
経営判断としての結論
ノーコードSaaS 経営判断ツリー
分岐は編集部整理(2026年5月時点・各社公式情報による)
経営者の判断軸は3点に集約される。第一に、Microsoft 365への依存度。第二に、利用者数 ÷ 編集者数の倍率。第三に、内製担当者を社内で育成するか外部委託するか。この3点を1時間で書き出せば、4社のうちどれが残るかは自ずと絞られる。
ノーコード導入時のバックオフィス設計:見落とされがちな「経費の罠」
ノーコードSaaSは月額20〜30ドルの海外サブスク決済が前提となり、編集者を増やすたびに為替手数料が乗る。50名規模で月5万円の海外サブスクを契約すると、為替手数料2-3%だけで年間18万円(各社公式料金 2026年5月時点に基づく試算)。決済の一元管理と為替手数料の最小化は、ノーコード導入の隠れた経営課題だ。
具体的には、海外SaaS決済に強い法人カード(三井住友ビジネスオーナーズゴールド、UPSIDER等)を、クラウド会計(freee 会計・マネーフォワードクラウド会計)および経費精算SaaS(マネーフォワードクラウド経費、楽楽精算、バクラク)と一体運用する設計が定石である。経営者として、ノーコードSaaSの選定とバックオフィス設計はワンセットで考えたい。
- → 経費精算SaaS(マネーフォワード・楽楽・freee)比較を読む
- → クラウド会計 freee vs マネーフォワード比較を読む
- → スタートアップ向け法人カード(UPSIDER・バクラク・freee)比較
Bubble・Adalo は編集者課金で規模が拡大しても固定費が増えにくい構造、Power Apps は Microsoft 365 統合の代わりに利用者課金、Glide は既存スプレッドシート資産を活かせる立ち上がりの軽さに強みがある。経営者として最初に決めるべきは「自社の利用者数と編集者数の倍率」と「Microsoft 365への依存度」の2点である。
